大人のランドセルとは何か?その奥深さと可能性に迫る!

大人のランドセルとは何か?その奥深さと可能性に迫る!

日本の通学アイテムとして私たちの記憶や意識にDNAレベルまで染み付いているかのように思えるのが、セーラー服、そしてランドセルです。
セーラー服は、欧米の海軍軍服が子供たちや女性の間でも流行する中で、戦前になって日本に導入されたものですが、ランドセルはオランダ陸軍の背嚢をモデルに、明治時代に原型が作られ日本独自に発展を遂げた、児童用特化型のバックパックです。
元来が高級品であったため、庶民に普及したのはやっと高度経済成長期の昭和30年代。
ところがバブル経済崩壊後の現在は再び高級品の範疇となり、低所得層にとっては厳しい出費の種になってきています。
これから先も、ランドセルは小学生たちの必須アイテムとして存在し続ける事ができるでしょうか?
正直、現在のままのランドセルでは難しいと、感じざるを得ません。
しかし、思いもかけぬ方向から、希望が見出せるかも知れません。
その可能性が、近年密かにメンズ、レディースの間で注目の「大人のランドセル」にあるような気がするのです。

1.「大人のランドセル」とはどんなものか

そもそも「大人のランドセル」という呼称が、「ランドセルは子供のもの」という強い固定観念を背景にしています。
しかしその極めて融通の利かない固定イメージ故に、子供時代をランドセルとともに生きた世代が大人になって世に問うファッション言語としてのランドセルや、今や日本のアニメなどを通じて海外の著名人の間でも知られ、愛用され始めたランドセルの姿に、私たちは衝撃を受けてきたのです。
ならば、これからは私たち一人一人が、その存在を再認識し、あらためてランドセルとは何だったかを、確かめる番ではないでしょうか?

2.大人のランドセル、その実際

オランダ陸軍の背嚢が起源とはいえ、ランドセルにミリタリー的なイメージを持つ人はほとんどいないでしょう。
しかしランドセルに秘められた大人向けのアイテムとしての可能性のヒントは、その素材が本革もしくは人工皮革と、あくまで「革」を基調としている事にあります。
まずは山羊の革を使用した、シルクロード・トレーディングのウィーケンドトラベラーシリーズをご覧ください。

出典:THE BRITISH BAG

一見ランドセルには見えませんが、京都を拠点に独自のセンスで関西に展開するシルクロード・トレーディングは、このシリーズについて「日本のランドセルと英国のスクールバッグが融合したような雰囲気」と紹介しています。
古風ながらA4サイズを収納する内側は仕切りやファスナー付きポケットが備わった機能性の高い作り
まさに世代を問わないデザインと質感ですが、これでも現在平均4万円はすると言われるランドセルの半分以下のお値段。
これからの子供たちのランドセルの未来をも明るく示してみせる逸品ではないでしょうか。

 

長年に渡るランドセル製造にかける誇りとランドセルの素晴らしさを成人にも知ってほしいという願いを込め、土屋鞄製造所が送り出した製品は、誰もがこれぞ大人のランドセルと認め、一つは欲しくなってしまう、まさに「クールジャパン」に仕上がっています。

出典:土屋鞄製造所

ランドセルを知り尽くした土屋鞄が、大人が背負っても違和感のない高さ、幅、厚さを追究した結果、絶妙のスリムな形状を創出。
また素材である「ヌメ革」は手間のかかるタンニンなめしによる自然な仕上がりが特徴で、牛が生きていた頃の証である毛穴やかさぶた、血管跡や虫刺されの跡までが残り、まさにこのランドセルが新たに命を吹き込まれた生き物である事が実感できるのです。

 

次に、見かけはランドセルとはかなり違うけれども、馬革を使用しており一般のビジネスバッグとも、リュックサックとも明らかに異なる無二の個性を持つ事から、ランドセルの新たな概念として豊岡鞄(アートフィアー)の、Cavalloリュックサックを提案したいと思います。

出典:ARTPHERE

カラーが黒だと、開口部が「がまぐち式」なせいもあってか大人以上にシニアなテイストすら醸し出しますが、色が変わると雰囲気も一変!
緑は革の渋さ、赤は華やかさを強調して全く新しいバッグの誕生を実感させます。

 

最後に紹介したいのが、シルクロード・トレーディング的コンセプトに共感しながら、さらに洗練を加え新たなランドセル像ともいうべきビジョンを打ち出すHERZ(ヘルツ)の「縦型ランドセル・玉縫いR-51-A」です。

出典:HERZ

HERZの製品は子供でも使用できる、というよりもともとが子供向きに作られた、正真正銘のランドセルです。
その名のとおり、横型ランドセルもあり、大人になっても使えるデザインと、大きさが考慮されているため子供にとっては少々大きく重いですが、長ければ数十年、使い込み直し込むほどに味わいが増す、究極のランドセルと言えるでしょう。

HERZがランドセルに込める想いの中に、「子供の頃から本物に触れて育ってほしい」という願いがあるといいます。
大人になっても使うという前提があれば、高価なものでも入手に迷わないという考えもあるでしょう。
ただ使い込んだものにこそ味わいや価値があるならば、新品を買い与えなければ子供がいじめに遭うという風潮がおかしいのであり、まずはそこから正していかねばならない事を、私たちは自らランドセルに触れながら学ぶ必要があるのではないでしょうか。
子供から、大人まで。そして、大人から、子供へ。
ランドセルが世代をつなぐ、新しい時代が始まっているのかも知れません。